
2012年
ロンドン五輪への第一歩となった19日の
クウェート戦(豊田)。関塚隆監督率いるU-22
日本代表は本番直前になってエース・永井謙佑(名古屋)を負傷で欠くことになった。今月1日のオーストラリア戦(新潟)などを見ても分かる通り、彼らの攻撃は昨年11月のアジア大会(広州)得点王である彼への依存度が非常に高かった。卓越したスピードという武器を誇る彼がいない中、どのような攻めに転じるか。それはこの一戦の大きな見どころだった。
関塚監督は8日の湘南ベルマーレとの練習試合で原口元気(浦和)のトップ下起用をテスト。彼と1トップに入った大迫勇也(鹿島)のタテ関係が非常にうまく機能したことから、この2人を生かしたチーム構成で挑むのではないかと見られた。しかし、フタを開けてみると、1トップ・大迫の背後に位置したのは清武弘嗣(C大阪)、東慶悟(大宮)、山崎亮平(磐田)の3人だった。ボランチも山本康裕(磐田)と山村和也(流通経済大)が入る形となった。東、山崎、山村はアジア大会優勝メンバーで、彼らのコンビネーションは計算できる。清武と東も大分トリニータで長年一緒にプレーしていて、お互いの特徴を知り尽くしている。こうした連携面を指揮官は重視したと見られる。
この采配は確かに当たった。
クウェートが迫力不足だったこともあるが、日本は序盤から凄まじい勢いで敵陣に迫った。2列目の3人は自由にポジションを変えながら持ち味を発揮。大迫も前線でしっかりとボールを収めた。両サイドバックも絡んで組織的な攻めを見せたことから、大迫や東がたびたびゴール前でフリーの決定機を迎えた。永井は頭抜けた個の力で勝負するタイプであるため、むしろ大迫が1トップ入った時の方がチームとしての連動性が高まる印象を受けた。
前半18分の先制点も実に見事な崩しから生まれた。中央に動いていた山崎が落としたボールを山村がダイレクトではたいて左を駆け上がった比嘉祐介(流通経済大)へ。比嘉はドリブルで深い位置までえぐってマイナスのクロスを上げた。この瞬間、大迫がニアサイドでGKとDF1枚をひきつけ、ガラ空きになったファーサイドに清武が飛び込んで豪快なヘッドを放ったのだ。今年に入って中東、ウズベキスタン遠征など回数は少ないながらも強化合宿を繰り返してきた成果が、こういったコンビプレーに現れたといえる。
清武の左CKにDFの濱田水輝(浦和)が打点の高いヘッドで合わせた2点目、山崎のスルーパスに大迫が反応した3点目といずれのゴールも攻めの迫力を感じさせた。「永井さんが出なくても前線には大迫とかいい選手がいるんでそんなに不安はなかった」とキャプテンの山村も語っていた通り、永井依存症に陥りがちだったチームのマイナス面も克服できそうだ。湘南の反町康治監督の「
ロンドン世代の前線はみんなJの試合に出ているし、顔と名前が一致する選手ばかり。非常に豪華」という評価に違わぬタレント性を見せたのではないだろうか。
ただ、後半に攻めの連動性が失われたのは課題といえるだろう。東を軸に清武、山崎と慣れたメンバーが組み、フレッシュな状態で動けるうちは問題ないが、体力が低下し、全体が間延びしたところに、選手交代が加わって、コンビより個の力に偏った攻めが多くなりすぎてしまった。それでもゴールという結果が生まれていれば問題なかったが、今回の
クウェート戦では結果的に攻めが空回りした印象だ。
こうしたリズムの崩れが後半の失点の一因と見ることもできる。酒井宏樹(柏)が相手の左サイド、ガジ・アルカハディ(5番)にボールを奪われ、鈴木大輔(新潟)がいったんクリアしたところを途中出場のMFジャベル・ジャゼア(10番)に決められたものだが、アウェーゴール方式が導入されている予選だけに、この1点を献上したのは痛かった。「3-0ならセフティリードだったのに。相手の実力もわかってちょっと油断してしまったのかなと思います」と山本も神妙な面持ちで反省していた。
中3日で敵地・
クウェートに乗り込む第2戦はより慎重な戦いが求められる。最高気温45度、試合が行われる夜の気温は30度台後半になるという。現地に行く私自身も戦々恐々としているが、未知なる酷暑の世界は何が起きるか分からない。ミスから相手の先制点を奪われたりすると、本当に窮地に立たされる。そんな最悪のシナリオだけは避けなければならない。
次は
永井が先発に復帰するはずだ。彼が入って攻撃の連動性はどうなるのか。卓越したスピードという特別な武器に依存する戦いに戻ってしまうのは今後のことを考えるとよくない。「永井も生きて、チームも生きる、そして確実に勝つ」という理想の戦いが見られるといいのだが…。










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